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【言語文化】『羅生門』初発の感想

飯能高校国語科のMr.Sです。
1年次言語文化では、芥川龍之介の『羅生門』に取り組んでいます。
全国の高校生が取り組んでいる作品です。

今回は、生徒の初発の感想を記事にまとめてみました。
どの生徒の感想もとても読み応えがあり、大変興味深く拝見いたしました。
今回はその中から4名の生徒の初発の感想を取り上げます!

『羅生門』
1時間目:文学史、『羅生門』舞台設定の確認
2時間目:全文を読み、感想を記入【本時】

羅生門を読んでいく中で、読点の使い方が今まで読んできた物語にはないような少し独特の使い方をしているなと思った。文章が物語の背景をとても細かく書いていて頭の中で物語の背景を鮮明に考えながら読むことができる。特に、30ページの14行目の「目を、眼球がまぶたの外へ出そうになるほど、見開いて、おしのように執拗く黙っている。」というところが、印象に残った。24ページの6行目の「作者はさっき」というところが他の物語では見たことがない言葉だったので他にはない使い方をしていて、面白いなと思った。内容自体は少し難しいと思ったが、読み進めていく中で下人の心情の変化や登場人物の動き、文の書き方に魅力を感じることができた。

生徒 初発の感想より

→文章表現に注目してくれました。本文を引用しつつ、どの部分からそれを感じたのかを書いてくれています。(本文に根拠を持つことはとても大事です)
語りの部分にも注目してくれています。このあたりの効果は授業を進めていくなかで一緒に考えていきましょう。

この物語は下人の心の動きが多く書かれており、正義感の強い下人が盗人に堕ちるまでの過程が合点がいくように書かれていて、どこか現実味のある話だと思った。最初は老婆に対しての憎悪が増していき、そして髪を抜く意外な理由に憎悪は失せ、老婆の言い分を聞き、正義感も失せ、ついには堕ちる。この流れが下人が自分が持っていた正義感がこの荒廃の時代にどれほど無意味でくだらないものなのかを悟り、着物を剥ぎ取り盗人となる以前の下人とは思えないような下人の心境の変化をの流れを素早く、かつ合点がいくように表現されていた。羅生門の魅力はこの、下人が堕ちるまでの心境の描写だと思う。

生徒 初発の感想より

→「自分が持っていた正義感がこの荒廃の時代にどれほど無意味でくだらないものなのかを悟り」という部分、とても面白いです。下人が引剥ぎを行うまでの心理の流れを、本文に即して、一緒に考えていきましょう。

面白かった。老婆の言ったことに対して男も同じような言葉を返しているところが特に面白かった。生きるためにはなにかの犠牲が必要であることが再確認できるお話だなと思った。人生お先真っ暗になったら私も同じようなことをするのかなと考えると、そうしないと生きていけないので普通に盗んだりして生きていくのかなと思った。同時に人の根っこはそんなに簡単に変わらないと思っているので老婆がいった言葉は下人にとってはすごく衝撃を受けた言葉になったんだろうなと思う。下人は盗人になるかならないか悩むくらいには根は優しい、常識がある人だと思った。自分は誰かの言葉一つで人生が変わった経験はないのでそこも含めて面白い作品だなと思いました。

生徒 初発の感想より

→確かに、根は優しいかもしれません(少なくとも悪くはないかもしれないですね)。老婆の論理は、下人にとって衝撃であり、人生を変えるような価値観だったのかもしれません。男も老婆と同じような言葉を返しているという気づきもとても良いですね。

盗みを犯して生き残るか、それともこのまま飢え死にするかの究極の二択を迫られている中で、盗みを犯すという選択を行ったことにより、人間にとって生きるとはなにかを読者に伝えたかったのだと思います。私はこの場面を読んだときに、主人公が行った悪事に対し、「仕方ないよなー」という同情が先に生まれました。現代や昔では、法律や憲法によって、盗みなどの悪事は良くないものだとされています。しかし、生死をさまよう中、生きるために仕方なく悪事を犯したのならそれは許されるものなのか、人によって考え方が変わってくると思いました。私は生きるためなら、盗みを犯してしまうと思います。主人公は今後盗みを犯してしまったという後悔を背負いながら生きていくのだと思います。

生徒 初発の感想より

→主人公に生きるかの選択をせまることによって、「生きる」とは何かを浮かび上がらせ、読者に迫ったという考えはとても面白いですね。主人公の今後についても想像力を働かせて、一緒に考えていきましょう。


今後も生徒の授業時の感想を取り上げていきたいと思います。
高校生が考えたことや、授業の雰囲気が少しでも伝われば幸いです。